この景色なするべからず

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 森の入り口に、『この景色擦るべからず』という看板があった。
「ヲミト。これどーゆー意味?」
「知らねぇーし。ほら行くべ」
 ヲミトは道の先を指差した。その指先がネチャッとした。
「なんだぜこれ?」
 指差した先の景色が飛沫みたいに跳ね上がり、木々に擦り付けたようになっていた。
「ヲミトぉー。どうすんだよぉー」
「関係ねぇーし」
 ヲミトはヒナミの腕を引っ張った。するとヲミトの掌全体がヌチョッとし、ヒナミの肘から先が景色にはみ出た。
「ヲミトォー。なんか腕痛いよぉ」
「お、おう。心配ねー。俺を見ろ……」
 ヲミトがヒナミの頬を両手で挟むと、顔の右と左がヘチャっと擦れて真ん中に集まって光った。
「うわぁ~~~」
 ヲミトは滅茶苦茶にヒナミを擦り、景色と混ぜてしまった。
「真っ白だ……」

 ヲミト? 入院した。脳みそがピカピカの泥団子になっちゃったんだって。あの森は立ち入り禁止になってるよ。
ホラー
公開:20/05/15 09:58
更新:20/05/15 17:04

新出既出20( 浜松市 )

新出既出です。
twitterアカウントでログインしておりましたが、2019年末から2020年年初まで、一時的に使えなくなったため、急遽アカウント登録をいたしました。過去作は削除してはおりませんので、トップページの検索窓で「新出既出」と検索していただければ幸いです。新出既出のほうもときおり確認したり、新作を挙げたりします。どちらも何卒よろしくお願いいたします。
自己紹介:「不思議」なことが好きです。

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