老人の遊び

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地位と名声を手に入れ、散々横柄な態度で過ごした男の末路は、寂しい老人であった。
孤独を紛らす酒も、この年ではコップに一杯が関の山。
庭を見つめ、荒凉とした思いに耽っていると、珍しく妻が茶ではなく炭酸水を運んできた。
暗澹とした気分を吹き飛ばすように、多めのひと口を一気に流しこんでみた。
喉の奥で勢いよく炭酸が跳ねる。
甘やかされた老人の喉には刺激がきつい。しかしなんだか気分が良い。
更にひと口飲む。
喉がまるで炎を飲み込むマジシャンのように熱い。
ふと笑いがこみ上げる。
すっかり楽しむことを忘れ、過去ばかり懐かしんでいた自分に。
「老いても楽しまなあかんな!熱い茶より炭酸飲んだりな!」
残りをグビグビっと流し込む。
と、ッゲーーー!
びっくりするほど大きなゲップが、寂しさも虚しさも連れて飛び出た。
無邪気な顔になっている自分に気付く。
「楽しい遊びでしょう」と、悪戯顔の妻が笑う。
その他
公開:20/05/15 08:36
更新:20/05/15 09:11

ほんだのほ

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場所:日本近代文学館
朗読出演者:10名(5名は高校生)
観覧者:最大30名(会場の定員は120名)
入場料:無料
主催:せたがや朗読教室プチプラージュ 
目的:10代~20代の朗読活動を応援するため
朗読形態:全文をそのまま朗読(1人2作品)
※公演が中止の場合は動画または録音によりYouTube公開


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