カタツムリ

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 ある家の木の塀にカタツムリが縮こまって休んでいた。家の住人の男がそれを見つけて言った。
「おい、カタツムリ。俺はお前が大嫌いだ。そんなところでじっとしていると踏み潰してしまうぞ。すぐにそうしないのは俺の情けだ。さっさとどこかへいけ!」
 男がそう言うと、カタツムリは慌てて両手を出し、裾をヒョイとつまみ上げると、ニュっと2本の足を出して一目散に走り出した。それを見て男は腹を抱えて笑った。
 ある日酒場で、隣家に住んでいる男にその話をして笑った。すると、
「ああ、うちの窓辺に足をくじいて動けなくなっているカタツムリがいたのは、そのせいだったんだな。かわいそうだと、爪楊枝を一本、くれてやったんだ」
 その話を聞いた男は驚いた顔をした。
「それで理解できた。おまえみたいなヤツのところへ若くて美しい娘が突然やってきて『わたしをお嫁にしてください』って胸に飛び込んできたって話がヨ」
ファンタジー
公開:20/05/15 06:51
更新:20/05/15 21:54

N(えぬ)( 横浜市 )

読んでいただきありがとうございます。(・ω・)/
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