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桟橋に女の霊が出ると言う噂を聞き、僕は湖へと車を走らせた。僕はその手の好事家ではない。自分にとって縁ある場所に現れた幽霊を、どうしてもこの目で確かめたかったのだ。
湖までの道は山沿いに淡々と続き、アスファルトグレーに等間隔で引かれた退屈な白線、そして擁壁に寄りかかる陰鬱な木々の緑が延々と伸びていた。ガードレール向こう、鼠色の空の下、田畑と大きな工業施設が交互に現れ消える。
退屈な景色の中を過去が過ぎる。今から向かうのはかつて愛した人との思い出の場所だった。ある病を持つ僕をずっと支え続けてくれた人。身を削る日々に耐えかね去ってしまった時も、僕はそれを責める気にはなれなかった。後に謝罪の手紙が届き、何度かやり取りをした。手紙が途絶え程なくして、僕は手術を受ける事になった。
湖に着くと、眩い快晴の下、桟橋に噂通り女がいた。
光を取り戻した僕の目に映る彼女は、何も言わずただ微笑んでいた。
湖までの道は山沿いに淡々と続き、アスファルトグレーに等間隔で引かれた退屈な白線、そして擁壁に寄りかかる陰鬱な木々の緑が延々と伸びていた。ガードレール向こう、鼠色の空の下、田畑と大きな工業施設が交互に現れ消える。
退屈な景色の中を過去が過ぎる。今から向かうのはかつて愛した人との思い出の場所だった。ある病を持つ僕をずっと支え続けてくれた人。身を削る日々に耐えかね去ってしまった時も、僕はそれを責める気にはなれなかった。後に謝罪の手紙が届き、何度かやり取りをした。手紙が途絶え程なくして、僕は手術を受ける事になった。
湖に着くと、眩い快晴の下、桟橋に噂通り女がいた。
光を取り戻した僕の目に映る彼女は、何も言わずただ微笑んでいた。
ホラー
公開:20/05/13 23:13
蛇野鮫弌 (はみの こういち)
一日一作を目標に。あくまで目標……
道草食いつつ逝きましょか。
Twitter @haminokouichi
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