タクシー

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病院勤務を終え、白衣のままタクシーに向けて手を上げる。
ようやく停まった一台。気の良さそうなおじさんが「お疲れ様です」と声をかけてくれた。
「今のご時世、お医者様も大変でしょう。いやね、私も長く咳に悩まされていまして、コホンと一つ声を出すだけでお客様から嫌がられる毎日ですよ」
その言葉に苦笑いを浮かべる。苦労しているのはどこも同じだな。
目的地に到着し、財布を取り出すも「医療従事者からはお金を貰えません」と断られてしまった。実を言うと今月はピンチだったのでありがたい。
代わりに私はおじさんに咳止めを渡した。
「運賃じゃなくてワクチンとは先生も洒落がきいていますね」

部屋に戻ると仕事着に着替える。黒衣を身に纏い、髑髏の面を着ける。
私の本業は死神だ。今から命の刈り取りに出かける。
ちなみに先程渡したワクチンはおじさんの体内の悪性菌を殺す物である。
私は死神なんだ。生かすも殺すも指先一つさ。
ホラー
公開:20/05/13 19:05

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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