ドラゴン・トースター

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最近トースターがおかしい。食パンの焼け方にムラがある。
今朝もパンを入れてタイマーをセットした。
テレビのニュースを見ていると微かにキッチンから何か聞こえる。
覗くとトースターの扉が開いていてその上に雀の子がいた。いや、雀の子くらいのドラゴンがいた。
ドラゴンはトースターの中に火を吹いていた。
タイマーが終わりそうになるとドラゴンはそっとトースターの扉を閉めて窓から飛んで出ていった。
案の定、パンは手前が少し焦げていた。
どうやらドラゴンは毎朝トースターに火を吹きに来ているらしい。
パンの焦げ目が濃くなる程度だったので放っておいたが
日が経つにつれドラゴンの火力が増すので
食パンを置く位置を変えたり、パンを冷凍しておく工夫が必要になってきた。
何週間か過ぎたある朝、トースターの中を見て笑った。食パンは完全に炭になっていた。
奴はきっともう来ないだろう。ここで火を吹く練習は終えたから。
ファンタジー
公開:20/05/14 15:03
更新:20/05/20 08:47

市杜 七( 関西 )

文章を書く練習中です
よろしくお願いします

市杜 七(いちと しち)

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