クローゼットのかぐや姫

「ただいまあ」
返事がない独り身の部屋の奥が、ぴかっと光った。クローゼットが、黄金色に輝いていた。クローゼットの扉が、バカっと開き、十二単の女性が現れた。かぐや姫と名乗り、僕に言った。

「燕(つばくらめ)のもたる子安(こやす)の貝(かひ)一つ取りてたまへ」

僕は子安貝を探した。AIにドローンを操作させて、日本中の燕の巣を探した。それでも、見つからないので、Twitterでつぶやいた。
数日後、僕のスマホに、アマゾンで子安貝が見つかったと、リツイートされた。
かぐや姫に知らせようと、クローゼットを開けたが、かぐや姫がいない。
パソコンの画面に、
＜時を経て波立ち寄れるアマゾンにまつかひありとつぶやきてをり＞

ちなみに、竹取物語では、かぐや姫が、石上の中納言に送った和歌の＜かいがない＞のシャレ。「貝がない」と「待つ甲斐がない」
　　年を経て波立ち寄らぬ住の江のまつかひなしと聞くはまことか