歴史が変わる瞬間

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タイムトラベラーは身近にいる。
僕の父がそうだ。

「母さんはどこにいるんだ?」
毎朝母を探して歩く父。

「父さん、母さんは5年前に亡くなったんだよ」
僕がそう言うと、父は驚き、なぜ死んだのか、なぜ今まで隠していたのかと泣き崩れることになる。
昼頃までにはすべて忘れてしまうのだが、毎朝このタイムトラベルを繰り返す。

毎日最愛の人が亡くなる父は、体力を消耗し、やせ細っていった。
年を取ると多くの人がかかる病気だから仕方がない。

タイムトラベラーに事実と異なることを伝え、過去を変えることはきっといけないことだろう。

「母さんはどこにいるんだ?」
毎朝の光景が始まる。

「イヤだなー 母さんは お友達と温泉旅行に行ったじゃない」
僕は歴史を少しだけ変えてみたくなり、できるだけ明るく言った。

「そうだったな 母さん、楽しんでこられたらいいな」

タイムトラベラーは少し幸せそうだった。
ファンタジー
公開:20/05/14 07:45

あおぞら

はじめまして あおぞらです。
読んでいただけたら、この上なく幸せです。
どうぞよろしく!!(^_-)-☆

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