交易路を眺める人の話

2
3

住んでいる町から少し行くと交易路がある。そこからは延々と進めば夢に見たことすらないほどの大都市があって、神様の化身である皇帝様がそこを治めているという。

悪友共と一度その道を辿ってみた。行けども行けども埃っぽい道が続くのを確認できただけである。そのうち怪しげな隊商が砂埃を立てて近づいてきた。子供を商品にするという盗賊共の噂を思い出し、そのマントの模様も確認できないままそそくさと逃げ帰ってしまった。
そんな始末であるから、延々と進めばたどり着くはずの町へその時どの程度近づけたのかは不明である。

自分は小作人の息子であった。この道を辿っていくことは生涯ありえないことである。
それならばこの延々と辿れるはずの道が近所にあるのも、その行く先に気を引かれるのも全く意味のない話である。

あのときの悪友共の一人が妻を娶った。もう一人は既に病で死んでしまった。
自分は未だ時折道を辿る夢を見ている。
その他
公開:20/05/13 05:58

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容