大家さん

僕はアパートと言えばいいのか、マンションと言えばいいのかわからない建物の3階に住んでいる。
4階には大家さんが住んでいる。

大家さんは口うるさくて、ゴミの分別が甘い、階段は静かに上れ、ゴミの分別が甘い、ゴミの分別が甘いと細かいことをやたらと注意してくる。
なるべく鉢合わせにならないよう遠くにそれらしき姿が見えると道を変えたりしていた。

しかし、この生活ももう終わりだ。
二ヶ月前に仕事をクビになった。
横浜には居たいが貯金は尽き、家賃が払えない。
実家に帰るか。

ピンポーン
大家さんだ。
家賃滞納の小言でも言いに来たか。

「今月家賃払えてなくてすいません」
「いいよ、仕事が決まるまで待つから。あなたの母親みたいなもんだからさ。これ食べて」

なぜか玉ねぎをくれた。
僕の母親が亡くなっていることは伝えていないから発言に深い意味はなかったのだろうが、僕の心に強く強く響いた。