陽射しの中の花火

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「た〜まや〜!」夏の花火大会でよく見る風景。
その場で見た迫力と美しさに僕は魅了された。
「弟子にして下さい。」中学を卒業して、人里離れたこの地についた。
「分かった。」親方はそう言った。
2つ返事でそう言った。
すぐに造れるものと思っていた。
何もやらせてもらえなかった。
先輩のしごとをただ見ているだけの毎日。
苦痛で仕方なかった。

「造らせてもらえないんですか?」
ふざけたもの言いだ。
職人舐めんなよという親方の無言が恐かった。
3年もただ見てるだけの毎日。
「花火、造ってみるか。」親方は言った。
出来栄えなんて、酷いもんだった。
火薬の量も形も、てんでひどい。

夏の日の昼間、花火は上がった。
太陽に重なった花火は美しく空に輝いた。
「きれいなもんだ。昼間の花火もいいもんだな。」親方は空を見上げて、つぶやいた。
僕には分かっていた。失敗策なのが。
ただ、親方の愛が嬉しかった。
その他
公開:20/05/12 20:40

ポエマータカノ( 横浜 )

愛を言葉で伝える事が使命だと感じている。
42歳のおじさんです。
カラオケ、料理、笑わすこと、読書、哲学、物思いにふけること大好きです。

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