紫雨随想

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千の齢を生きるもの。
不死であり不二であり不時であり不治。皇統に蔓延る藤原。巻き付き絡み君臨する天蓋の花。垂れ下がる房は歩揺にも、女王の毒蛇にも似ている。妖艶と毒の色、花は食べられるが毒を持つ。樹皮も莢も種子も毒がある。
絞め殺しの蔓。首くくりの縄。咲き誇る紫を一皮剥けば、まるで絡新婦の網。喰い込んで動けない台木を覆い、せめぎ合い上へ上へ。風に混じる喘ぎは苦痛か恍惚か。花言葉は『決して離れない』――小唄の様に巻かれて寝たらどんな気分だろう。絶え間なく降り注ぐ紫の雨は、振り払いたい程優しい香りがする。
もし一息に散ったら。支える木がなかったら。試算してすぐ放り出す。
咲こうが咲くまいが、とうに山は呑まれている。
考え飽きて見下ろせば紫の海。萎んだ花の中央で、灰茶けた目が睨む。
藤はマメ科、マメは間目だったか。房に連なる蝶形花が、今度はジャノメチョウに見えてきて、さてどれで書こうとまた考える。
その他
公開:20/05/13 18:05
脳内随想録『藤』 延々続く連想ゲーム

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

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