西洋館の幽霊⑦

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 心配した島田さんと水本先生は優介君と相談を重ねた。でも、優介君は「寝てる間のことで全然覚えてないし大丈夫」と笑うだけだった。その後も続き、食事中に歯が欠けたり、口内炎が染みるようになっていた。何より心の状態が心配された。
 優介君の性格から心配をかけまいと2人には隠し通すと考えた島田さんと先生は、申し合わせた訳ではなく其々が俺に相談したのだ。

 その日は2人が塾から帰るのを待って、島田さん宅で夕食を共にした。子供達は久しぶりに会った俺を大歓迎してくれ、とても楽しいひと時を過ごし、泊めてもらうことにした。
 子供達が就寝して暫くしてから、島田さんと2人でそっと子供部屋を覗くと、歯を食い縛り眠る優介君の目からは涙が溢れていた。
「…お母さん!」
 俺達は彼を抱きしめたい衝動を嗚咽しながら堪えた。
 絶対に助ける!
 その時、俺の決意に呼応するように強く握りしめる良行君の小さな拳に気付いた。
ミステリー・推理
公開:20/05/15 17:00
更新:20/05/21 23:58
立中森一(たてなかしんいち) 推理物シリーズ

NORIHISA( 碧の星 )

   創作活動はこちらのショートショートガーデンが初めてです。令和元年12月31日から投稿開始しております。
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