夏の思い出はほっぺた

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「スイカでも食べようか。」母は言った。
娘ははしゃぎ、元気に、美味しそうに食べる。
そんな夏の、のどかな風景は幸せしか感じさせない。
陽気に笑い、全身で母への愛を伝える。
そこに喜びがあり、母は幸せであった。

「早く、元気になってね。」娘は元気に言った。
元気な子からの元気な励まし程、貴重なものはない。
元気になろうと思った。生きたいと思った。
こんなにも娘は成長したのだと思った。

自宅療養の日々が続いていた。
白血病だ。
体調が優れている日には娘との時間を。
そんな毎日だった。
回復が見込めるかも、分からない中で、母は自分の気持ちと病気と戦っていた。
娘にはありったけの愛情を注いでいた。
寂しくないように見守り、自由にさせてきた。
成長した娘は精一杯、母に愛を返していた。
幼いながらも自分のできる限りの愛で。
赤いほっぺたと真っ赤なスイカが母にとっての生きる糧となった。
その他
公開:20/05/11 21:23

ポエマータカノ( 横浜 )

愛を言葉で伝える事が使命だと感じている。
42歳のおじさんです。
カラオケ、料理、笑わすこと、読書、哲学、物思いにふけること大好きです。

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