黄色いドア

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その店は裏通りの角にあった。
コーヒーは濃く、古い洋画のポスターはヤニで黄ばんだ喫茶店。
店にはそれぞれの道に面した扉が二つあった。赤いドアと黄色いドア。
彼女は黄色いドアから店をでた。
そうしてあの人にであったのだ。

研究者だった恋人との幸せな日々は続かず、陰謀で母国から追われ長い逃亡生活の果てに恋人は命を落とし、戦争がおこり地球は荒廃した。老いた彼女がたどりついた母国の町は砂漠と化し人影はなかった。
だが、その一角に見覚えのある扉があった。あの喫茶店だ。

扉をあけた瞬間、彼女はあの席にすわっていた。蛾がまう薄暗い灯り。黄ばんだ古いポスター。飲みかけのコーヒーがおかれている。
あのとき選んだ黄色いドア。その向こうにある未来を見たのだ。

でももう間違わない。今度こそ。
彼女はドアに手をかける。
もう一度あの人にあうために。今度こそ未来をかえるために。
黄色いドアの向こうへ飛び出した。
ファンタジー
公開:20/05/11 19:00

kei

再開しました。今までコメントをしてくださった方々、お返事できず失礼しました。
これからもよろしくお願いします。

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