すてきな彼女

今日はぼくの誕生日。
彼女のアキコが、大きな栗の木の下でぼくを待っているんだ。
木の下につくと『ここを掘ってね』とアキコからの手紙が置いてあった。
一時間も掘り続けただろうか。
木の下から真っ赤なマフラーが出てきた。
そこには白い毛糸で丁寧に『今日は風邪のためいけません』と織り込んであった。
マフラーを手に呆然とその場に立ちすくむ。
これを作るのにきっと何日もかかっただろうに。
こんな深い穴を掘る元気はあったのに。
なぜわざわざこの文字をマフラーに織り込んだのだろう。
様々な疑問が浮かんでは消えた。
穴を掘って汗をかいたのだろう、口から飛び出したくしゃみで我に返った。
アキコの赤いマフラーを首に巻いて考える。
女の子の考えることなんて分からない。分かるはずもない。
しかしこの暖かさだけは本物だ。
栗の木にもたれかかり大きく空を仰ぐ。
そこには幸せの空が広がっていた。