おやつSS・ミルクレープ

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 コーヒーショップ。テーブルの上には彼女のお薦めのミルクレープとラテ。
 薄いクレープの断層を見ながら、何かに似ていると思った。

 私が昔持っていた雲母の破片だ。
 祖父から貰った宝物。
 ある時誰かが、雲母の層の中に一枚だけダイヤが入っていることがあると言った。
 それを聞いた私は、雲母の薄い層の一枚目を剥がした。
 剥がれた薄い鉱石は脆く、私の手の中で細かく割れた。
 それからも私は雲母を少しずつ剥がした。
 ダイヤの話が嘘だと気付いたのは、雲母が全てなくなってからだった。

「聞いてます?」
 彼女に声を掛けられて、私はハッと我に返った。
「それで、この開運の石なんですけど」
「やっぱりやめます」
 
 本当に彼女が幸運なら、ここで大事なことを思い出させるミルクレープを選んだりしない。

 わたしにとって開運の石は、あの祖父から貰った雲母だった。

 
 
 
 
 
 
 
 
その他
公開:20/05/12 13:30

堀真潮

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