ベンチ

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この公園のベンチに座るのが好きだ。

ここに座ると、いろいろな匂いを感じる。
草花の間を抜けた風の匂い
夏の夕方のもわっとした空気の匂い。
落ち葉の匂い。
降り出しそうな雪の匂い。
時間があるとき。時間がなくて自分をなくしそうなとき。このベンチに座って目をつぶって、匂いを感じる時間が好きだ。


今日はなぜだか仕事に入っていけず、スマホだけ持ってこのベンチに来た。
座って目をつぶる。
いつもとは違う匂い。でも懐かしい匂い。
高校時代に初めてつきあった彼女の匂いだった。
思い出。ドキドキ。楽しい時間。悲しさ。苦しさ。

その時、自分が感じた悲しさや苦しさは、彼女の悲しさと苦しさが跳ね返ってきたものだったのだと突然気付く。
うろたえ、今なのか20年前のものかわからない感情を抱えたままベンチを立った。
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公開:20/05/12 06:02
更新:20/05/15 05:03

ヒロロ( 横浜 )

小さい頃は文を書くのが好きでした。
書くことをしなくなり、長い時間が経ち、いざ書こうとすると全く書けなくなっていることに愕然としています。
また一から少しづつ書くことに慣れていきたいと思います。

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