ノンアル アイアル

社員同士の飲み会でのこと。同僚の女の子が、憧れの先輩である彼と、楽しそうにお酒を飲み交わしていた。
私は大のお酒嫌いだが、先輩と楽しそうに話している彼女を見ていると、羨ましくなった。
「山田は飲まないのか？酒ダメだっけ？」
「いえ！私もいただきます」
不意に先輩が訊ねてきたことに驚きながら、私はありもしない嘘を反射的についてしまった。
そして、勢いに任せた私は、ジョッキのビールをごくごくと平らげていた。


彼は微笑みながらグラスへシャンパンを注ぐ。
「君も飲めるように、アルコールなしだよ。いつぞやの飲み会みたいに、気絶されたらたまらないからね」
彼の軽口に、私は頬を赤らめる。私は未だにお酒は嫌いだか、今こうして、無事に結婚記念日を迎えている。
グラスを見つめると、シャンパンに溶かされたトッピングフラワーが、華開いていた。
今夜は"愛"というアルコールに、酔いつぶれるだろう。