一つだけのメニュー

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昼食を食べそこねた昼下がり。路地裏のラーメン屋を見つけた。なんとなく入ってみる。他に客はいない。メニューには「今日のラーメン 600円」それだけ。注文する。ほどなく出てきたラーメンを口にする。わからないスパイスと癖のある香り。うまい。
「これ何の味?」
店主は黙って奥の扉を指さす。その向こうに答えがあるということか?

どこかの国の味のするスープを飲み干し、お金を払った。扉に向かうと、店主が初めて口を開いた。
「帰るときはまた見つけておくれ。」
入り口は店主の向こう側に見えている。何のことだ?

扉を開くと、突然真上から照らしつける太陽。三輪自動車の排ガス、クラクション。大声で知らない言葉を話す人々。
「え?どこ?」店主に尋ねようとふりかえると店はなく、ただひとつづきの町が広がっていた。

そういうことなのか。
仕方なくメニューが一つしかない店を見つけに、何も知らない町に足を踏み出した。
ファンタジー
公開:20/05/11 05:40
更新:20/05/11 08:53

ヒロロ( 横浜 )

小さい頃は文を書くのが好きでした。
書くことをしなくなり、長い時間が経ち、いざ書こうとすると全く書けなくなっていることに愕然としています。
また一から少しづつ書くことに慣れていきたいと思います。

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