あつがりな紅茶

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「これ、お土産」
そう言って恵子がくれたのは、可愛らしい紅茶缶だった。
「えー嘘。ありがとう」
さっそく蓋を開けると、ぷんと甘くいい香りがした。
「嬉しい。さっそく飲んでみるよ」
「うんうん。クッキーとかぴったりだと思う」
でもね、と恵子が続ける。
「その紅茶、あつがりだから。レンジの近くとか気をつけてね」
ははあ。茶葉が湿気るとかそういうことか。私はそれをクーラーの効いたオフィスの引き出しに大事に仕舞った。

「はあ、今日も疲れた」
帰宅した私は、ベッドに倒れ込む。そうだ。恵子に貰った紅茶を飲もう。起き上がって、コンロでお湯を沸かす。紅茶を開封して、ティーポットに茶葉を落とす。ふわりと漂う香りに、私は絶対的美味を確信する。ヤカンが音を立て、私はそれを片手にテーブルへ戻る。そして、沸きたてのお湯を茶葉に注いだ。

「あっつ!!」

茶葉が熱湯に驚いて、ポットの中でばしゃばしゃと踊った。
その他
公開:20/05/10 14:28
スクー みんなで脳内旅行

ささらい りく

簓井 陸(ささらい りく)

気まぐれに文字を書いています。
ファンタジックな文章が好き。

400字の世界を旅したい、そういう人間の形をしたなにかです。

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