あったかい手品

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祖父は温かい心の人だ。優しく思いやりがあり、義理堅い。
手品が得意だ。喜ばす事が好きだ。
私をいつも、笑顔にしてくれた。
かっこいいし、素敵だ。
「男はかっこよく生きないとだめだ。」
それが口癖だった。
相手に心を配り、心に灯火を灯す。
それが祖父の生き方だった。
父とは死別していた。
片親だった私は祖父と祖母に育てられた。
寂しくはなかった。
立派に親の義務をはたしてくれた。
いつも感謝していた。
祖父の手品は消えたり、出したり、増えたり、減ったり、イリュージョンまで様々だった。
事あるごとに新作だと私に見せ、そして喜ばしてくれた。
「何か欲しいものがあるのか?」誕生日プレゼントをきかれた。
「父さんが欲しい。」そう答えた。
「わかった。」そう言った。
祖父はイリュージョンした。
父のサングラスとデニムを履き、登場した。
あったかい祖父の手品には愛がこもっていた。
その他
公開:20/05/10 12:41

ポエマータカノ( 横浜 )

愛を言葉で伝える事が使命だと感じている。
42歳のおじさんです。
カラオケ、料理、笑わすこと、読書、哲学、物思いにふけること大好きです。

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