言うことのクセ

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「紗季の言ってることは、あまり正しくないことが多いよ」

銀色のパイプベッドの上の安物の掛け布団を少し引っ張って、背中にそれを当ててもたれながら春人は言った。

目の前のコーヒーカップをテーブルの上にとんと置いて、小声でもう一言加えた。

「別に正しいこと言えって思ってないけど」

狭いワンルームのキッチンに立っていたものだから、紗季は春人の言うことを雰囲気も含めて全て理解していた。

洗い物が少し残っていたが、水道をキュッと止めた。春人の目の前に向かって座るまでの時間で、伝えたいことが蒸発しそうで、振り向きざまに言った。

「正しいと思ったことだけ吸い込んでくれればいいよ。他はゴミだと思って捨てて」

少し強めの口調だったのもあって、春人の細めの目がマルッとなったので、紗季は思わずクスッと笑った。

それを見た春人も少し笑って言う。

「そういえば全体的に紗季の言うことは好きだな。」
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公開:20/05/10 09:21

secondone( 猫知事周辺 )

3児の母です。得意料理はおにぎりです。

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