秘密の水曜日

１年近く続いた秘密の時間。

毎週水曜日３時限目は選択科目で、２クラス合同で授業を受ける。席は南の窓側。私はいつも外を眺めていた。
向かいには少し小さな校舎があり、木工室や美術室などの特別室専用校舎。授業が始まって少し経った頃、３年の男子が猛ダッシュで木工室に駆け込んだ。

ーー同じバスケット部の先輩。

３ポイントシュートが得意な彼。彼のしなやかな手、そして細くて長い指から放たれる弧を描くようなシュートは、一瞬で私を虜にした。
私は彼を、彼の手を目で追うようになっていた。

それから水曜日は私だけの秘密の時間。
私は今日も彼を、彼のしなやかな手を目で追いかける。

そして最後の授業の日。
木工室から出てきた彼の背中をじっと見つめていると、彼が振り向き…目が合った。驚いた私に、彼は人差し指を口に当ててシーというジェスチャー。

彼はきっと私に気づいてた。
これは、最初で最後の彼との秘め事。