かはたれ

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薄明の青に森を歩くと、かはたれに捕まる。
ただの口伝と思っていました。日の長い季節は時を忘れがちなもの、子供を家に留める方便だと。
かはたれは、彼誰と書きます。夕方の黄昏に対し、夜明け前のほの暗い頃を指すのです。
かはたれ、たそかれ、同じ音と意味を孕む言葉。いずれも逢魔が刻でしょうけれど、暮れゆく黄昏とは違い、明けゆくかはたれは払われるもの。恐れるまでもないと思っていましたし、かはたれが何であるかを、私は知りませんでした。

まだ黒々と沈む木立の中、それは青々と光っていました。
丈は幼い子供ほど、山雪を木の形に削った様に儚げでした。細かな枝先は空と呼応して、夜藍から青、淡空へと色を変えながら輝きを増し、暁そのものの荘厳さでした。
触れた指から、涼やかな風が吹き込んで髪を揺らし、体の隅々まで濯ぎました。
明けの曙光が森を射た時、かはたれはそこにはなく、誰とも知れない殻が一つ転がっていました。
ホラー
公開:20/05/09 23:59

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
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