はるばる先に

思えば遠くまで来たものだ。ネットさえあれば通販で何でも届く今の時代、それだけは現地でしか手に入れる手段がない。
ご当地品、と言えば聞こえはいいがそこに辿り着くまでの苦労を考えると割に合わないと思う時もある。
若い時分は絶対に手に入れてやると息巻いていたが歳を取るにつれそんな気持ちも失われていく。周囲が立ち止まってしまう中、歩を進めそれに手を伸ばし、掴み損ねる。全く厄介な代物だ…
家族や友人は呆れた。それでも私は手を伸ばし、ついに掴み取る事が出来た。
小説家、という夢を私は手にした。
長い…長い旅だった。そっと掌を開き、掴んだものを確認する。
それは長い長い尻尾の様なものだった。掴んでいないとするりと逃げてしまう。しかしその先は一向に見えない。
溜息が出る。夢とは何と厄介なものか…はるばる辿り着いた先がまだまだ道半ばであった。
しかし私は前を見つめる。はるばる先に輝く何かが見えているからだ。