若返りの薬

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「リサ、こんなことをしてどうなるかわかってるのか?」
「ええ、わかってる……ハッピーになるの、私が」

後ろ手に縛られた僕を見ながら、リサはニヤリと笑う。

「博士には感謝してるわ。十年前、記憶喪失で行き場のない私を、研究の助手として雇ってくれたんだもの。でも、今日でその生活も終わり。この薬で取り戻すの……失った青春を」

リサは手に持った透明な小瓶を振った。中の数粒の錠剤が音を立てる。その錠剤こそ、僕が秘密裏に研究していた若返りの薬。一粒飲めばたちまち五歳若返る。

「このまま老いさらばえていくのはイヤ。私、生きてみたいの……映画で観たような、甘酸っぱくてほろ苦い青春!」
「リサ、やめろ!君は……」
「博士……ありがと」

リサは錠剤を四粒程手に取り、口に含んだ。


「仕方がない、やり直しだな……AIにも改良の余地があるようだし」

僕の眼前には、小瓶と電子基板と鉄の塊が転がっていた。
SF
公開:20/05/08 21:30
更新:20/05/08 21:39

makihide00( 鳥取→東京→福岡 )

30代後半になりTwitterを開設し、ふとしたきっかけで54字の物語を書き始め、このたびこちらにもお邪魔させて頂きました。

長い話は不得手です。400字で他愛もない小噺を時々書いていければなぁと思っております。よろしくお願いします。

Twitterのほうでは54字の物語を毎日アップしております。もろもろのくだらない呟きとともに…。
https://twitter.com/makihide00

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