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博士の後ろにはいつも痩せっぽっちの助手が立っている。
私が喜怒哀楽の表情を作る度に博士は私を抱き寄せた。
「成功だ」と。
博士の腕の中、私は視線を助手へと向ける。
彼は熱心に研究成果を書き留めている。
博士に褒められることが嬉しかった。
ある日、博士が死んだことを助手から伝えられた。研究も打ち切りとなる。
助手が手を滑らせ、研究書類を床にばらまいてしまった。
彼が熱心に書き留めていた書類だ。
一枚拾い上げるとそこには
『そのままの君でいい』と書かれていた。
この書類にも、また別の書類にも。
『君は君になれ』
私へのメッセージのようなものが。
「悪魔が死んで僕は清々しているんだよ」
助手の目は少し赤い。
「僕は酷い人間だから」
彼は私を真っ直ぐ見つめながら言った。
「人間になんてならなくていいんだ、君は」
人生で一番悲しい日だから。
私は涙を流す機能を使わなかった。
私が喜怒哀楽の表情を作る度に博士は私を抱き寄せた。
「成功だ」と。
博士の腕の中、私は視線を助手へと向ける。
彼は熱心に研究成果を書き留めている。
博士に褒められることが嬉しかった。
ある日、博士が死んだことを助手から伝えられた。研究も打ち切りとなる。
助手が手を滑らせ、研究書類を床にばらまいてしまった。
彼が熱心に書き留めていた書類だ。
一枚拾い上げるとそこには
『そのままの君でいい』と書かれていた。
この書類にも、また別の書類にも。
『君は君になれ』
私へのメッセージのようなものが。
「悪魔が死んで僕は清々しているんだよ」
助手の目は少し赤い。
「僕は酷い人間だから」
彼は私を真っ直ぐ見つめながら言った。
「人間になんてならなくていいんだ、君は」
人生で一番悲しい日だから。
私は涙を流す機能を使わなかった。
SF
公開:20/05/08 21:24
書いたり喋ったりする金髪ギャルのひとです。時空モノガタリ出身。
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