涙出るカーディガン

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何を語る。そこにあるカーディガンは懐かしの思い出を呼び起こす。
祖父の香りと優しさを。
行儀よく背を正し、何も言わず、読書をする祖父の姿を。
祖父は言った。「後悔なく、自分の好きなように生きろ。」と。
若かりし時の祖父には愛する女性がいた。
夢中になり、追い続けた。周りは見えなくなった。
10歳下のその女性は祖父の子を身籠っていた。
責任がとれなかった。好きでもない仕事をし、収入も少ないなかで養っていけるのかという不安が祖父を止めた。
必要以上に追い回し、得たのに関わらず自由に生きていない。
決断出来ない自分へのいらだちと中途半端な覚悟が愛する人々も傷つけるという結末。
人に愛を与え、自分の事はお構いなしに満足しきれてない人生を悔やんでいた。
祖父の着ていたカーディガンを見ると、ただ涙が溢れ出る。カーディガンは後悔だけはするなと語っていた。
その他
公開:20/05/09 11:13

ポエマータカノ( 横浜 )

愛を言葉で伝える事が使命だと感じている。
42歳のおじさんです。
カラオケ、料理、笑わすこと、読書、哲学、物思いにふけること大好きです。

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