跳ねるれんこん

2
5

れんこんを見ると思い出す。母が良く作ってくれた。豚肉をれんこんで挟んだ天ぷら。
15の僕は家を出た。母と顔を合わせたくなかった。
「あなたの父さんは死んだのよ。」
そう聞かされていた。
幼い頃の父との記憶は一緒に食べるはさみあげの思い出だった。

遊ぶ金が欲しかった。引き出しの中の母の財布から1万円抜いた。
その隣にあった、数多くの手紙を見つけた。
死んだはずの父からの手紙だった。
僕は罪をおかした父の息子だった。
どうしようもなかった。怒りも憎しみもどこにぶつけたらいいのか。
幼き頃の悲しみ以上に僕の心は揺れていた。

頭の中が真っ白になるくらい歩き続けた。
お腹がすいた。母が待っていた。
父が好きだったはさみあげは僕は好きだ。
どうでも良くなった。皆、父の事が大好きだった。それだけで幸せだった。
その他
公開:20/05/07 10:01

ポエマータカノ( 横浜 )

愛を言葉で伝える事が使命だと感じている。
42歳のおじさんです。
カラオケ、料理、笑わすこと、読書、哲学、物思いにふけること大好きです。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容