夢喰虫

昨日から、夢を見なくなった。
病院に行ってみると、どうやら夢吸虫が寄生したとのこと。
そういえば、いつの日か、虫を叩いたことがあった。医者曰く、その時に寄生されたんじゃないか、と。そして、対処法はなく、できることは、薬で不安を取り除くことぐらいだ、とも言われた。
薬を貰い、家に帰って、フラフラの足取りで布団に倒れ込み、ふと、夢、それは何だったかを思い出そうとした。しかし、「夢はこうらしい」という鋳型のような言葉の羅列は思い浮かんでも、それが私にとって何を意味するかは分からず、反復を繰り返すうちに、次第に、深い眠りへと落ちていった。
起きた。やはり、夢は見ない。それは昔もそうだったはずだ。そうだった。それなのに、違う、何かが違うのだ。いや、違わない、しかし、それならこの動悸は何だ、この焦りは。この滴る汗は何だ。
私は訳も分からずに、急いでベランダから身を投げだした。