恋は四つ足

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初恋の相手は猫でした。そう言うと同僚には笑われたけれど、本当だから仕方がない。二度目の恋も猫だと言えば皆はどんな顔をするだろう。入社して三年。仕事には慣れた。成果を問われることが増えて人並みのストレスを抱えるようになった。会社員なんて兵隊みたいだと笑っていた学生時代は、もう波にさらわれて消えた。
今の会社は立地で選んだ。最新のウォーターフロント。周辺に野良猫はいないから仕事に集中できる。近隣に暮らして古い町や住宅街を避け、恋をしないように気をつけた。
それなのに僕は恋におちた。造成された砂浜を歩く淡いグレーの髪の彼女。棄てられたというけれど、使いこまれた首輪には「LOVE」と刻まれている。
彼女の毛並みには甘いミルクティーの印象があって、僕の心をあたためてくれる。僕たちは互いの体を擦りつけて砂浜にごろんする。運命ってこれか。相手が人か猫かは関係ない。二度目の恋。彼女の尻尾はぼんぼりタイプ。
公開:20/05/07 07:18

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