8
7

手紙には書き手の心が詰まっている。
優しさ、嬉しさ、高揚感、安堵、悲しみ。
いろんな感情がそこにはある。

実家に帰った。30年ぶりに。懐かしい思い出の地は私の記憶の断片に語りかけてくる。
幼い頃、住んでいたあの家には寡黙な父とアルコール依存に苦しむ母の記憶。
幸せな家族の光景などなかった。
劣等感に苦しみ、自分を責め続けた母にとっては私は愛する対象ではなかった。

自由に生きられなかった母の人生。
気づいていながらも母の意思に縛られるだけの私の人生、もう傷つきたくないと家を飛び出し帰らず、そして二度と母には会えなかった。
「私はあなたの自由を奪い、不自由に生きてきた私の人生と同じものをあなたに与えてしまった。でも、決してあなたを愛さない事はなかった。」
亡くなる前に送られてきた、母からの手紙にはそう綴ってあった。
母はきっと幸せだったんだ。そう思った。
その他
公開:20/05/07 16:03

ポエマータカノ( 横浜 )

愛を言葉で伝える事が使命だと感じている。
42歳のおじさんです。
カラオケ、料理、笑わすこと、読書、哲学、物思いにふけること大好きです。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容