虫ベビーカー

お母さんが僕のベビーカーを外に置きっぱなしにしていた
玄関のドアをそっとあけてみると
ベビーカーは大きな虫になっていた
サンシェードの内側の卵がかえったのかもしれない
その虫に乗ってばあちゃんとさんぽに出かける
ばあちゃんは魔法が使えるんだ
ばあちゃんの一声で僕の周りは虫でいっぱいになった

羽が草を弾く
ヒソヒソヒソ
何かはなしてる

僕はもっと知りたくて耳を澄ましてみた

気がつくと僕も虫になっていた

近くでトンボが嬉しそうに羽を休めている
バッタは高く飛ぶ方法を教えてくれた

スズムシの鳴き声が心地いい

虫達の背中は夕日に照らされてくすんだ輝きをはなっていた
僕はそんな虫が大好きで
いつの間にか眠ってしまうのだった

窓を開けると
乾いた風の匂いが通り抜ける
そばで気持ちよさそうに妹が寝ている

いつか妹にも虫達が見えるかもしれない

そう思うと

少し嬉しかった