空気家族

「家族って空気みたい」
よく聞く言葉だけど、僕の家族は本当に空気だ。
生まれたときからお互いの姿は見えないけど、僕たちは存在して一緒に暮らしている。
ドライな父ちゃんに湿っぽい母ちゃん、森兄ちゃんに海姉ちゃん。
楽しいと澄んでいて、ふわふわと軽い空気。喧嘩すると住んでいて、不和不和と重い空気。
読めばわかるんだ。
外に出ると、実体を持った家族が手を繋いでいて羨ましくも思う。
『気体しないよ』
僕が溜め息を吐くと、
「よそはよそ、うちはうち」
と母ちゃんが吸い込んでくれた。
そうだよね。
風に乗ってドライブしたり、ジェット風船に入って、遊園地ごっこもできるもんね。
あ！でも父ちゃんが家でオナラをすると大変！
母ちゃんがすぐ換気してくれるけど、屁圧で空気が張り詰めると家が破裂しちゃうんだ。
そうそう、今度、僕たちは引っ越しをするんだ。家も一緒さ。
真空パックすると運びやすくて、長持ちするんだ。