新築家族

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ズシンズシンと重い音があたりに響く。
十や二十ではない。何百もの数が遠く連なっている。

僕は唖然としながら、山道の途中にある、大きな空き地を指さした。
「ここにお願いします」
「承知した」
野太い声がして、そのうちの1つが空き地に入り、
よっこらしょと言いながら、腰を下ろす。
残りはズシンズシンと音を立てて立ち去っていった。

僕は眼を丸くして、先程まで空き地だった場所に声をかける。
「皆さんどこに行くんですか?」
「家を欲しがっている人達の所だよ」
僕は心底驚いていた。

まさか本当にいるとは思わなかった。
魔族や妖族と並ぶ不思議な存在、家族。
日本家屋や洋風建築、大小色とりどりの家が、列をなして山道を登っていく。

その姿が小さく見えなくなったあと、僕は空き地に座り込んだ家族を見上げた。
とてもいい家だ。今日からこの家族は僕の家族だ。
「ただいま!」
僕は大きな声で家の扉を開けた。
ファンタジー
公開:20/05/06 14:18

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