プロレス家族

プロレス好きの両親は結婚後、かつてカナダのプロレス界を牽引したハート一家を目指した。12人の子どもは全員レスラーになるかプロレス関係者に嫁ぐという、ドラマのような奇跡の家族である。
私も3歳上の兄も3人の弟妹もプロレス漬けの毎日を送ってきた。現在私と弟は高校のレスリング部に所属。兄は某団体でデビューを果たしたレスラーである。
今日はそんな兄の結婚式だ。元々無口な兄は、今日も静かに金屏風の前に座っている。隣には逆プロポーズをしたプロレスファンの奥さん。
余興はありきたりの新郎新婦にまつわるクイズだったが、司会がレスラーなだけあって大盛り上がりのままクライマックスを迎えている。「では最後！結婚の決め手は⁉︎」しかし正解が出ないまま、マイクは兄に向けられた。「では、ご本人の口からお聴きしましょう！」先輩レスラーの言葉に、兄は穏やかにこう続けた。
「受けの美学です」