扇風機の収穫

一面に広がる広大な扇風機畑で今日も扇風機の収穫が始まる。
熱帯の大地で扇風機は人々の命を繋ぐ生活の糧であった。
子供達は皆生まれてすぐ収穫間もない扇風機に当てられその風に包まれる。そしてよい羽根を見極めるよう躾が行われるのだ。
15歳になると扇風機の首を振ることを許される。これは大人の仲間入りを意味する。
首を振り自分以外の仲間にその涼しさを分け与えることで他者への友愛を示し、自らの扇風機がよそを向いている間、その灼熱の神に我が身を委ねるという犠牲と勇気の証なのだ。村一番の若者にはさらに首を長くすることが認められ、最大の名誉と地位が約束されるのだ。
青年はこう語る。
「俺たちがなぜ今も扇風機にこだわり続けるかって？そんなの決まっている、村中をいや世界中を俺のファンでいっぱいにしたいのさ」
彼は笑ってタイマーツマミを優しくひねった。
扇風機は今日も旋回し
人々の声色を変えるのだろう。