処処聞奏鳥

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ここ最近、朝方に鳥が鳴いている。
山里住まいなので、鳥の声自体は珍しくないが、鳴くより奏でるに近い音を発する。
声の大きさは鶯くらい。ソラシドレ、とはっきり音階を刻む。人が笛でも吹いていると思う程のメロディ。正体を掴もうと調べてみたものの、これぞという鳥に当たらない。

一昨日、天気に誘われて散歩に行き、例の鳥に遭遇した。
しばらく前、近所に出来た建物。工房か炭焼き小屋か、表には木材が積み上がり、屋根に突き出た煙突。いつも閉まったシャッターが開き、声は中から聞こえる。
正面へ椅子を構え、熊の様ないかつい男性が、ごつい両手をリスの仕草で口に当てる。――ソラシドレ。
木のオカリナを初めて聴いた。自粛自粛で詰まった息が、ふっと抜けた。
歩調を緩めていたら目が合った。お邪魔だったかな、一礼して通り過ぎる。
背中から『コンドルは飛んで行く』が聞こえて来た。
家を通り過ぎ、今度は逆方向へ散歩に行った。
その他
公開:20/05/06 14:50
更新:20/05/06 14:53
最近のちょっと良い事。 タイトルは孟浩然『春暁』より ※似ているけど微妙に違うので、 音階の鳥は、多分本物の鳥です。

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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