はるばる先に

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厚さ数cmの扉が私と彼を隔てる。この薄い扉が今の私には分厚く感じる。彼との距離がはるばる先に感じる。
彼からコロナの陽性反応が出た。
彼は即入院。会う事は叶わない。
彼に会いたい…昨日まで喧嘩していた事が嘘のようだ。2週間。会う事がなければ口も利かなかった。
そのおかげで私からはコロナが検出されなかった。
涙する私の耳に携帯のコール音が響く。私は相手の名前を見てここが病院である事も忘れて電話に出た。
「シュン!大丈夫なの?苦しくない?辛くない?」
「うん。熱は出ているけど大丈夫だよ。ごめん、心配かけたね。メグ」
彼の元気そうな声を聞き、嬉しくて涙が出た。
「シュンが遠くに行っちゃったみたいで寂しいよ…」
「そうだね。僕も寂しいよ。でも僕らはこうして繋がっている。大丈夫。僕は絶対に君の所に帰って来る」
彼の声が、はるばる先に感じていた距離がずっと近くになった。
嬉しくなって、また涙が零れた。
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公開:20/05/06 09:43

幸運な野良猫

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元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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