交通難家族

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「ほんと、こういう無責任なやつらばっかだよね。何様?」とブスッとした表情でサキが荒々しく座った。テレビを見ると、アイドルから転身した起業家を匿名で誹謗中傷した犯人が逮捕されたらしい。「人との距離間は大切だよね」と朝刊を静かに読んでいた親父がぼそっと言う。「だよね」とサキはトーストをかじった。

新卒の俺のぐちを聞きながら「トモはまだ世間知らずだからなあ」と親父が口を滑らせた。すぐさま母さんの席から「ピピーッ!」とけたたましい笛の音がして、ハッと目線を向けた。その席だけは何もない。

そこには警備員の小さなおじさんが立ち、車間距離を調整するように警備灯でバックを促した。親父は慌てて言い直す。「トッ、トモはこれから沢山の経験をして分かってくるかもしれないな」サキはんーっと唸り「それも、ちょっと…何様?」

そう、俺んちの家訓は「家族だって他人。礼儀をつくせ」それは亡くなった母さんの口癖だった。
ファンタジー
公開:20/05/06 09:12

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