すなおなおなら

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お見合いで早々に二人きりにされても困る。高そうな料理も喉を通らない。私には昨日のラーメンのほうが性に合ってる。
向かい側に座った男性は好みのタイプだった。真面目な雰囲気も悪くない。
しかし、何を尋ねても、口元を震わせるだけで黙ったままだった。ふと、男性の指先が震えていることに気がついた。
この人も緊張していたのか。
それがわかると意地でもこの人に喋らせたくなった。
よし、と気合いを入れた瞬間、私のお尻からプゥと空気が漏れた。
赤面して顔を俯かせた。
彼がバンッとテーブルを叩いて立ち上がり、鼻をヒクヒクさせた。
思い出した。彼の職業は臭気判定士。国家資格の匂いのエキスパートだ。
「いいオナラです。あなたの腸内バランスはとても良好だ。こんな健康なオナラには出会ったことがない」
緊張を解いた彼が優しく微笑んだ。
「あのラーメン、僕も好きです。今度一緒に食べに行きませんか?」

丁重にお断りした。
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公開:20/05/06 08:54
更新:20/05/06 15:24
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