終わらない家族

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 それでも春だった。
 隕石で地球が滅亡すると知ったその日、僕は彼女と入籍した。ドレスとタキシードの代わりに、揃いのジャージを着て、静かな街を走った。シャッターの降りたデパートの傍で、妻は囁いた。
「今年の桜、綺麗ね」

 妻の親から祝電が届いた。願わずにはいられないのだろう。「いつまでもお幸せに」と書かれた言葉に、妻は背を向けた。よく二人でふざけたソファに妻を座らせ、人の子の形のロボットを妻に見せた。
「どんな温度や環境にも耐えられるAIロボットを作った。僕たちの、子供」
「綺麗な地球が見えるように、私の目をこの子にあげたい。鳥の声が聴こえるようにあなたの耳をあげて」
 僕は自分の耳を切り落とし、ロボットにつけた。妻の目をロボットに埋め込んだ。
「僕たちはずっと、一緒だ」

 百年が過ぎた。
 僕らの子ども、SAKURAは今、宇宙船の中。
「お父さん、お母さん、地球は青くて美しいです」
SF
公開:20/05/06 11:36

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