メガネ家族

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「お義父さんは、メガネも一緒にって言うに決まってます」

葬儀場の指示に従い、母は渋々、棺のお爺ちゃんから黒メガネを外した。それを見届けた親族たちは、ほっと胸をなでおろしたように、僕には見えた。

僕の家系はみな、産まれながらにメガネをかけている。僕が生まれた日のスナップには、目も開かぬ赤ん坊がズレたメガネで泣きわめく姿が。

血よ、と母は笑った。本当にその血が流れてる父方の叔父や叔母が一人二人とコンタクトに変えていくなか、もともと大道芸人だった母は縁なしを鼻メガネに変え、ストローを吹けば紙風船が伸びる細工まで施した。

まるで路端のピエロ。そんな母をお爺ちゃんは味方し続けた。生かされていることの強さは、時流の不確かさを浮き立たせるようで。だから…。

炉から出てきたお骨に、絶句しながら僕は母を振り返った。シャレコウベに黒メガネ。母はおどけるように、ピロピロロと紙風船を伸ばした。
ファンタジー
公開:20/05/06 07:20
更新:20/05/06 12:48

糸太

400字って面白いですね。もっと上手く詰め込めるよう、日々精進しております。

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