頂戴家族

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 ある男には『神』が憑いていた。己の人生に消極的な男に神は、褒美を用意していた。
 ある時。「あのさ神さま。親が超うぜーんだけど。もっといい親、頂戴」男の軽い態度を見て取った神は、笑顔でこう言った。
「よかろうよかろう。直に本当のいい親を与えてあげよう」
 しかし約束は守られず、成長した男は改心し、心から親を大事にするようになった。
 そしてまた、ある時。
「あの、神さま。美人の嫁が欲しいんです。美人の嫁さん頂戴な!」男の寝言を呆れながら聞いていた神は、笑顔でこう言った。
「よかろうよかろう。直に本当のいい嫁を与えてあげよう」
 しかしこの約束も果たされぬまま時は過ぎ、男は美人ではないが優しい幼馴染と結婚し、いつしかこの嫁を心から愛するようになった。 

 その後も家族に不満があると男は代わりを要望したが、叶わぬまま本当の家族に変えていった。
 今も『神』は何もせぬまま、一族に憑いている。
その他
公開:20/05/06 06:37
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二森ちる( 瞑想と妄想の森で )

二森(ふたもり)ちると申します。
人生の節目に、二つ目の名前をつくりました。童話や小説などはこの名で執筆しています。
怪談やホラー系は「鬼頭(きとう)ちる」名義で活動しています。
どうぞよろしく。

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