ホテル家族

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父の帰宅時間に合わせ、姉と僕は玄関へ向かう。母はキッチンで夕食の準備中だ。
「おかえりなさいませ、お荷物お預かり致します」
「ご夕食は30分後にお部屋にお持ち致します」
父に付いて寝室へ入る。
「…今日、ベッドメイクをしたのは?」
「わ、私です」
姉が恐る恐る父の顔を見る。父の評価はいつも厳しい。
「うん、綺麗に出来ている。チップをあげよう」
姉の顔がパッと明るくなる。
「ありがとうございます!」

とんだ亭主関白…なのではない。ホテルマン一族の我が家では、毎日誰かがお客様役となり、日々おもてなしの訓練をしているのだ。両親がお客様役の日にはチップ制度があるが、滅多にもらえない。おかげで今月は財布がピンチだ。

先ほど父から渡された5月のシフトを確認する。第二日曜はハウスキーパー。お客様役は…やっぱりそうだよな。僕はチップを獲得すべく…いや、最高のおもてなしをすべく、花屋に電話をかけた。
ファンタジー
公開:20/05/06 05:50

みきやん

普段は病院で働くひと。
のんびり妄想したい。

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