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「目障りだよな、あいつ」
「自動で動くってだけで偉そうなんだよ。エスカレータってヤツは」
「人間はヤツの前に列を作って順番待ち。たまにきたと思ったら、列にはじき飛ばされ、ため息ついてる親父たち。暗い顔で使われたら嫌気がさすぜ。ヤツをやっちまおう」

 翌日駅のエスカレータが故障していた。
 階段は白いタイルをピカピカにして今か今かと利用客を待っていた。
 
 男がエスカレータに乗ろうとした時、それが動かないということに気づいた。
 男はため息をつきながら、とぼとぼとエスカレータの上を歩いていった。
 階段たちは訝しげに目を合わせた。
 しかし男だけが例外というわけではなかった。
 皆エスカレータに乗ろうとし、故障に気づきエスカレータの上を歩いていったのだ。

 朝のラッシュが終わり、エスカレータがため息をつきながら呟いた。
「故障なんて嫌になっちゃう。これじゃ階段と変わらないじゃない」
ファンタジー
公開:20/05/06 04:43
更新:20/05/06 12:56

牧原加奈( 大阪府 )

牧原加奈です。
よろしくお願いします。

https://twitter.com/makihara_kana

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