家族の日の家族

　今日は、家族の日。
　地球ではすべての人類に〝ある映像〟を観ることが義務付けられている。違反すると生命や財産にも関わる重罪なので、皆おとなしくその映像を視聴する。

　内容は、何てことはない感動ドラマだ。十分あまりの短いその映像には、親子・夫婦・兄弟・祖父母に孫と、ありきたりの家族愛が描かれている。
　家族の誕生や死、病気や苦難など、お涙頂戴の連発だが、そのあとには必ず〝敬意・感謝・絆〟と家族ならではの感動セットが盛り込まれ、大団円で締めくくられる。

「今年も感動したなぁー」
「泣けたわねぇ～。ハンカチハンカチ」
「ありがとう、パパ！」
「だいすきよ、ママ！」

　意外にも、誰一人として反発する者や離脱者はいない。それほど人々の心に響く大作なのだ。

　最も、この映像は毎回超低予算で、三流星に住む末端の末端のヘッポコ脚本家が適当に書き、出汁も染みないダイコン役者が演じているのだけれど。