5
4
僕は彼女に別れを切り出した。
「僕は今日、職を失った。仕事がなければ、貯金もない。学もない。才能もない。僕といても君は幸せになれない」
彼女は言った。「だから?」
「だから別れよう」
涙もろい彼女のことだから、涙を流して去っていくと思っていた。
しかし僕の予想に反して彼女は泣かず、僕の前を立ち去ることもなく笑顔で言った。
「あなたはあれもない、これもないと言うけれど、それは『ない』ものだけを数えているからだよ」
「えっ」
「『ある』ものを数えましょうよ。あなたは私の幸せを考えて別れを切り出してくれた。思いやりがあって優しさがあって、そんな誠実な姿勢があるんだよ。決してお金では買えない価値のあるものをあなたは私に与えてくれていたよ」
綺麗事を言うつもりはない。お金も必要だし、未来がどうなるかはわからない。
でも僕は彼女を抱きしめて離さない。
彼女と一緒なら、どんな時でも希望が『ある』から。
「僕は今日、職を失った。仕事がなければ、貯金もない。学もない。才能もない。僕といても君は幸せになれない」
彼女は言った。「だから?」
「だから別れよう」
涙もろい彼女のことだから、涙を流して去っていくと思っていた。
しかし僕の予想に反して彼女は泣かず、僕の前を立ち去ることもなく笑顔で言った。
「あなたはあれもない、これもないと言うけれど、それは『ない』ものだけを数えているからだよ」
「えっ」
「『ある』ものを数えましょうよ。あなたは私の幸せを考えて別れを切り出してくれた。思いやりがあって優しさがあって、そんな誠実な姿勢があるんだよ。決してお金では買えない価値のあるものをあなたは私に与えてくれていたよ」
綺麗事を言うつもりはない。お金も必要だし、未来がどうなるかはわからない。
でも僕は彼女を抱きしめて離さない。
彼女と一緒なら、どんな時でも希望が『ある』から。
恋愛
公開:20/05/06 01:03
ショートショートに魅了されています。
いつか本を出すことが目標です。
宜しくお願い致します。
こちらで初めて書かせていただいた「駅伝家族」で賞をいただきました。
また、伊坂幸太郎さんの「ガソリン生活」のキャッチコピーコンテストに入賞し、文庫版の帯に同ペンネームで使用されております。
noteにも【チョルクーパー】というペンネームでショートショートを投稿しておりますので、フォローして下さると嬉しく思います。
投稿している作品は同じですが、改行などの関係で読みやすくなっております。
多少加筆修正もするかもしれません。
ログインするとコメントを投稿できます