26
13
今年の空植えも無事終わった。水を張った空田の畦に腰掛け、弁当を食べる。
長靴は膝まで真っ青に染まり、前掛けは陽射しの匂いがする。寒気にかじかんでいた指が、今はほんのり温かい。
「いやぁ、良い青だね」
耕雲機の風音が筋雲を引いて停まり、向かいの畦から声が渡って来た。
逆側では空植え機が始動。ああして一気に片付ければ楽だろうけど、手植えの方が自然で優しい空になる。頭上と水面に広がる五月晴れ。深呼吸すると、体の中から透き通りそうだ。
空田は文字通り、空を育てる田んぼ。この星の空はすっかり汚れ、元々の色を失ってしまった。頭上の空は去年育てた古空。水面に映す事で苗を作り、植え込んで成長させた新空を昇らせる。循環再生でようやく保たれた空。手間暇の掛かるわりに実入りが少なく、空農家も年々減少している。
空刈りの頃には、秋晴れが一面に広がります様に。
植えたての青に手を合わせ、お茶に浮かべた空を啜った。
長靴は膝まで真っ青に染まり、前掛けは陽射しの匂いがする。寒気にかじかんでいた指が、今はほんのり温かい。
「いやぁ、良い青だね」
耕雲機の風音が筋雲を引いて停まり、向かいの畦から声が渡って来た。
逆側では空植え機が始動。ああして一気に片付ければ楽だろうけど、手植えの方が自然で優しい空になる。頭上と水面に広がる五月晴れ。深呼吸すると、体の中から透き通りそうだ。
空田は文字通り、空を育てる田んぼ。この星の空はすっかり汚れ、元々の色を失ってしまった。頭上の空は去年育てた古空。水面に映す事で苗を作り、植え込んで成長させた新空を昇らせる。循環再生でようやく保たれた空。手間暇の掛かるわりに実入りが少なく、空農家も年々減少している。
空刈りの頃には、秋晴れが一面に広がります様に。
植えたての青に手を合わせ、お茶に浮かべた空を啜った。
ファンタジー
公開:20/05/05 16:47
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
https://amzn.to/32W8iRO
ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
ログインするとコメントを投稿できます